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アウディジャパン Audi Sport
“《極限》が私たちにもたらすもの”

“《極限》が私たちにもたらすもの”

2022年の1月、アウディはあの有名なダカールラリーに出場することが決まっている。
先日開催されたRS Q e-tronの発表会で、アウディスポーツの代表であるユリウス・ゼーバッハが語った、
本ラリー大会の伝説と、《極限》についての魅力、そして新しいことに挑戦する勇気とは。

Interview: AUDI AG – Photo: Marcus Sauer

※本サイトに掲載している写真はダカールラリーに出場する車両で、市販モデルではありません。

“《極限》が私たちにもたらすもの”“《極限》が私たちにもたらすもの”

フォーミュラEの開催により、レースの世界にサステイナブルなイメージがつきました。しかし今回アウディはフォーミュラEを離れ、ダカールラリーに出場するということですが、矛盾していませんか?

アウディはドイツのプレミアメーカーの中で初めてフォーミュラEに挑戦し、この数年で様々な変革を遂げてきました。しかし、私たちにとって電動車はもはや未来のビジョンではなく現実のものとなっています。そのよい例がアウディ初のハイパフォーマンスな電気自動車であるAudi RS e-tron GT*¹で、この車は2021年のはじめから市場に出ています。一方でダカールラリーへの出場はわれわれにとって新しい挑戦となります。目的はアウディの技術を更に発展させ、それを皆さまに見ていただくことです。電動のパワートレインにTFSIエンジンとジェネレーターを搭載したエネルギーのコンバーターシステムを組み合わせ、それを極限の条件下で走らせるのです。

*1 Audi RS e-tron GT: 電力量消費率*: 20.2-19.3 kWh/100km (NEDC)/22.5-20.6 kWh/100km (WLTP)、二酸化炭素排出量*: 0 g/km
* 表記の仕様はドイツでのみ有効で、他の地域では適用されません。


フォーミュラEとラリーではかなりの違いがありそうですが、今回はなぜこのような極限の大会に出場することを選んだのでしょうか?

それはまさに《極限》にこそ刺激を感じるからです。アウディはモータースポーツにおいて、これまでも誰も挑まなかった挑戦に挑んできました。1980年台の初期にはクワトロ・ドライブがラリーの世界に革命をもたらし、ル・マンの24時間レースではアウディがハイブリッド車で初の優勝を果たしました。今回のダカール・プロジェクトでは極限の環境の中で機能する電動ドライブのコンセプトを更に発展させていきます。Audi RS Q e-tronは電動パワートレインにTFSIエンジンとジェネレーターを搭載したエネルギーコンバーターが組み合わされています。1つ確かなことは、今回の車は今までわれわれがレースで使ってきたどの車よりも技術的に難しい車だということです。


今回のドライブコンセプトにはどのような特徴がありますか?

まず、パワートレインが電動式です。砂漠には充電ステーションは存在しないため、今回は革新的な充電コンセプトを採用しました。Audi RS Q e-tronにはDTM(ドイツツーリングカー選手権)で2連勝を獲得したTFSIエンジンが搭載されています。このエンジンには走行中に高電圧バッテリーを充電するエネルギーコンバーターシステムが搭載されています。バッテリーや電動ドライブ、内燃機関などの様々な構成部をインテリジェントに繋げて、極限の環境でも最適に機能させるというコンセプトです。

“《極限》が私たちにもたらすもの”“《極限》が私たちにもたらすもの”
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ラリーはサーキットでのレースと比較して何が違いますか?高揚感はどこで感じられるのでしょうか?

比較するのは難しいです。モータースポーツはとにかく、細かいチューニングと完成度がものを言う世界です。しかし、それぞれに違いもあります。例えばラリーでは、さまざまな路面を踏破する必要があります。デコボコした路面や穴、ジャンプや水たまりなど、中でもダカールラリーの難関は砂丘です。また、レースは約2週間も続きます。毎日800キロ、ときにはそれ以上の距離を走行します。それらの試練を乗り越える技術は、他のさまざまなチャレンジをも乗り越えることができるのです。


しかし、このようなプロジェクトはアウディスポーツの輝かしい成功の歴史に、ある意味リスクを与えることになりませんか?

このような大会に挑戦するにはリスクはつきものです。しかし、「冒険しなければ何も得られない(虎穴に入らずんば虎子を得ず)」ということわざも真実です。アウディはこれまでも新たなチャレンジに挑戦することによって成功を収めてきました。今回のダカールラリーも同じように成功へつながると信じています。多くが不可能だと信じていることを、われわれの優れた技術で実現することができると確信しています。私にとって、それが「Progress(前へ進む)」ということです。


アウディスポーツのトロフィー棚に、新たなトロフィーを飾るということですね?

ダカールラリーはモータースポーツの中でも最も困難なチャレンジと言えます。しかしその一方で、このラリーを通してわれわれ自動車メーカーが新たな技術を試し、未来の自動車づくりへのヒントを得る機会にもなり得ます。他の多くの自動車レースで使用されている車は制約が多く、未来の市販モデルに進化させていくのはとても難しいのです。


しかしダカールラリーは違うということですか?

技術的な制約はたくさんあります。しかし、ダカールラリーでは「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」をいくつもの分野でアピールすることができます。例えばフォーミュラEとは違い、自社で開発したバッテリーを搭載することができ、それをさらに発展させていくこともできます。バッテリーの技術とエネルギーマネージメントは将来の電動化に向けて大きな可能性を秘めた開発エリアです。


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多くが不可能と信じることを実現する。<br>私にとってそれが《Progress(前へ進む)》という事です。

ユリウス・ゼーバッハ

Audi RS Q e-tronについて話しましょう。2022年の1月にリリースされるということですが、開発の中で一番のチャレンジは何でしたか?

まず言いたいのは、レースカーの開発は完成することはないということです。開発期間が短いことだけでも十分に困難です。今回ダカールラリーに出場を決めたのは、たった1年弱前のことです。その中で私たちが目指した車は非常に複雑で高い機能を要する車でした。それに加え、パンデミックの影響も大きなものでした。この状況で、計画通りに世界にこの車をお披露目できたことだけでも、最初の成功を手にしたと言えるでしょう。チームの多大な努力の結果だと思います。そしてこれからはテストが始まります。まだまだこれからです。


時間との戦い、複雑な構造、求められる高機能…諦めてしまいそうになった瞬間はありましたか?

開発がかなり進んでからルールが変更になり、そのせいで時間と工数がかなりかかってしまったことがありました。しかし、そんな中でも高いモチベーションを維持し自信を持ってチャレンジに挑んだチームメンバーたちに私は誇りを持っています。


まとめ:ダカールラリーの車は何を象徴するのでしょうか?

極限の環境にも対応できる将来の技術を象徴する車になります。レースカーのモットーとして、「Form follows function(形態は機能に従う)」という言葉があります。今回われわれのデザインチームはそれを見事に証明しました。Audi RS Q e-tronは以前のダカールのプロトタイプと比較しても格段に美しく、際立った仕上がりになっています。

“《極限》が私たちにもたらすもの”“《極限》が私たちにもたらすもの”
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技術はさることながら、ドライバーチームは今回のラリーに向けてどのような意気込みですか?

世界でも有数のドライバーにとっても、今回のチャレンジは新たな挑戦となります。オルタナティブなドライブコンセプトの車でダカールラリーに出場して優勝する。これが達成できればラリーの世界に激震が走ります。ステファン・ペテランセルはダカールラリーで最も成功を収めたドライバーの1人。そしてカルロス・サインツはダカールラリーで複数回優勝し、ラリーのワールドチャンピオンです。2人は今回のプロジェクトに初めから意欲的でした。また、マティアス・エクストロームは過去にもアウディスポーツで輝かしい結果を残してくれた才能ある世界的なドライバーです。われわれのドライバーチームはスピードだけではなく、さまざまなエキスパート性やモチベーションを持ち合わせています。ダカールラリーでは重要な役割を果たすコドライバー(助手席に座るナビゲーター)たちも同じ意気込みです。


最後にラリーにおける過去の栄光について質問します。1980年代の伝説のラリードライバーと言えばヴァルター・ロールですが、彼がAudi RS Q e-tronを初めて見るとき、どんな反応をすると思いますか?

彼の時代にクワトロ・ドライブが自動車の世界を変えたように、今回のコンセプトにも同じポテンシャルがあると思ってもらえるでしょう。

“《極限》が私たちにもたらすもの”“《極限》が私たちにもたらすもの”
 
Audi RS Q e-tron:未来の技術の実験室、ダカールラリーに参戦

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Audi Sportは、最初のコンセプトが発表されてから1年に満たない異例の早さでAudi RS Q e-tronの走行テストを開始し、このモデルで、2022年1月に開催される国際的なラリーイベントである、ダカールラリーに参戦するというチャレンジに挑みます。

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「レースは技術の実験室である」この創業者アウグスト・ホルヒのモータースポーツ哲学を受け継ぎ、数多くのレースで勝利し、成功を収めてきました。私たちは「技術による先進」を証明し続けます。